東京地方裁判所 昭和43年(特わ)44号 判決 1968年7月20日
本籍
東京都千代田区神田一ツ橋二丁目三番地の二
住居
右同所
会社役員
久保政市
明治四〇年三月五日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官上田政夫出席の上審理して次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
但し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人久保政市は、東京都千代田区神田一ツ橋二丁目三番地の二に居住し、蒲団の販売等を営む株式会社久保蒲団店の代表取締役として同社の経営にあたる傍ら、右住居において無届けの貸金業を個人で営んでいたものであるが、自己の所得税を免れる目的で、受取利息の全部を脱漏し、簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一 昭和三九年分の実際総所得金額は一六、五三七、〇二三円でこれに対する所得税額が七、四四三、六〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四〇年三月一一日東京都千代田区神田錦町三丁目二一番地所在の所轄神田税務署において同税務署長に対し、総所得金額が一、六三九、〇二九円で、これに対する所得税額が九七、四八〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて右年分の正規の所得税額と右申告税額との差額七、三四六、一〇〇円を免れ
第二 昭和四〇年分の実際総所得金額は二五、六一一、六一一円で、これに対する所得税額が一二、六九五、七〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四一年三月一一日前記神田税務署において同税務署長に対し、総所得金額が一、六九一、三三六円で、これに対する所得税額が一〇五、一一〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて右年分の正規の所得税額と右申告税額との差額一二、五九〇、五〇〇円を免れ。
たものである。
(判示各事業年度における実際所得金額の算定については、別表第一および第二の修正損益計算書記載のとおりである。)
(証拠の標目)
A 事実全般につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書三通
一、被告人作成の上申書
一、東京都経済局金融貿易部金融課長大津平蔵作成の回答書
一、杉井達夫の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官稲垣信夫作成の銀行調査書二通
一、前記事務官作成の取立手形調査書二通
B、第一および第二の各所得、税額関係につき(末尾カツコ内のアラビア数字は、各事実に対応する別紙勘定科目の番号を示す。)
一、大蔵事務官稲垣信夫作成の手形割引料収入明細書-昭和三九年分(第一<1>)
一、前記事務官作成の手形割引料収入明細書-昭和四〇年分(第二<1>)
一、前同事務官作成の貸付利息収入明細書-昭和三九年分(第一<2>)
一、前同事務官作成の貸付利息収入明細書-昭和四〇年分(第二<2>)
一、昭和三九年度所得税確定申告書一通(当庁昭和四三年押第四八七号の一)(第一)
一、昭和四〇年度所得税確定申告書一通(当庁前同押号の二)(第二)
一、民事一般調停申立書副本等一綴(当庁前同押号の四)(第二<3>)
(法令の適用)
被告人の判示第一の所為は、昭和四〇年法律第三三号所得税法附則三五条により改正前の所得税法六九条第一項に、第二の所為は、昭和四〇年法律第三三号所得税法二三八条一項、一二〇条一項に各該当するが、情状により懲役刑と罰金刑とを併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、罰金刑については、同法四八条二項に従い合算額の範囲内で被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、なお同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の懲役刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 小島建彦)
別紙第一
表 修正損益計算書
久保政市
自昭和39年1月1日
至昭和39年12月31日
<省略>
別紙第二
表 修正損益計算書
久保政市
自昭和40年1月1日
至昭和40年12月31日
<省略>